「ワイヤレスジャパン2025」セミナー実施

802.11ah推進協議会
広報・普及TG

2025年5月28日~5月30日の3日間、リックテレコム主催の国内最大級の無線通信の専門展示会「ワイヤレスジャパン2025」が開催されました。今年も802.11ah推進協議会(AHPC)は、(一社)無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)と共に5回目となる共同出展を行いました。

展示会出展報告は、ホームページへ掲載しております。詳細はこちらをご確認下さい。
AHPCホームページお知らせ(2025年6月18日リリース)

今回の出展では、「WXワイヤレストランスフォーメーション 地域と社会を変える!Wi-Fi HaLowとWi-Fiの最前線をご紹介」と題して、AHPC、Wi-Biz、協賛出展企業6社による出展社セミナーとブース内ミニセミナーを開催しました。AHPC、各社が持つ最新の11ah製品や実証の取り組み、11ahの導入や利用の参考となるノウハウの紹介を実施し、出展社セミナーでは2日間にわたり合計240名ほどの方に、ブース内ミニセミナーではブースに入りきらないほど多くの方にご参加いただきました。協賛出展企業6社による当日の講演スケジュールは以下の通りです。


■ Wi-Fi HaLow(802.11ah)は、実際どこで利用されているのか?

サイレックス・テクノロジー株式会社 木下 浩 様

802.11ahへのニーズ、実証テストではなく実運用で802.11ahを活用する事例、自社製品の技術優位性をご紹介されました。

802.11ahへのニーズ

・映像監視(防犯カメラ・設備監視)
・センサー通信(IoT機器連携)
・防犯、防災(映像以外)
・移動体用インフラ(搬送台車、ドローン等)
・AIとの連携(AI後のデータ通信、機械学習等)

導入事例

・工場、プラントでのカメラ使った防犯対策、遠隔監視
300mから600m離れた監視室からの出入り口や設備を遠隔監視
・工場、プラントでの各種センサーを使った遠隔監視
有線LANの距離制限が課題だった流量計を約300m離れた建屋間で無線化
スラブリフター上の温度センサー情報を約200m離れた場所で通信
ひずみ計や沈下センサー等の情報を得たデータロガーから遠隔でデータ取得・監視
・農園、プラントなど、広大な場所でのコミュニケーション手段
キャリア網の圏外で音声通話用インフラを構築

サイレックス社製品の技術優位性

屋内用の「温度拡張版BR-100AH(子機)」や「11ah中継機 EX-150AH」、屋内産業用途向けの「温度拡張版 AP-100AH(親機)」、屋外用の「屋外設置キット」、組み込み用途向けの「802.11ah対応 無線LANモジュール」を提供されている。
・温度補償水晶発振器(TCXO)採用
産業用途に耐えうる高品質な設計
・トラフィックフィルタ機能
既存環境との高い親和性を実現
・帯域制限モード
送信時間制限による通信停止を回避
・サーベイ機能
設置時の事前調査をサポート

*サイレックス・テクノロジー様 講演資料のダウンロードはこちら


■ 最新Wi-Fi HaLow(802.11ah)の実証・実装事例の紹介

株式会社フルノシステムズ 川地 耕二 様

様々な地域の自治体と連携し、生活の身近な環境におけるWi-Fi HaLowを活用した4つの事例をご紹介されました。

実証・実装事例

・埼玉県秩父市 人流や車両の交通量、混雑状況の可視化
Wi-Fi HaLowアクセスポイントとエッジAI搭載のIPカメラを使用して、観光地の混雑度合いの発信と、タクシー乗り場のタクシー待機状況を発信。観光客の効率的な回遊を促し、満足度向上を図っている。
・埼玉県茶業研究所 タイムリーな茶葉の病虫害等の予察
Wi-Fi HaLow対応カメラを使って害虫の発生状況をデータ化し、LINEアプリを使って適切な防除時期を発信。
・山形県長井市 河川氾濫箇所の遠隔監視
豪雨時に氾濫の恐れがある小河川が市街地に複数箇所存在し、現地確認を行う職員の業務負荷軽減や安全確保のため、Wi-Fi HaLow対応カメラを使って遠隔で監視。同地点に設置されたLPWAカメラとの画像の違いを紹介。
・徳島県那賀町 林業での木材収集装置の遠隔操作
林業における木材の集材作業を行う装置にWi-Fi HaLow対応アクセスポイントとカメラを装着し、木材を掴む装置を遠隔で操作することにより、現場作業の効率化と安全確保を図る。

■ Wi-Fi HaLow(802.11ah)モジュール製品と実証実験紹介

株式会社メガチップス 林 果保利

Wi-Fi HaLow対応製品の紹介、オプション機能「Traveling Pilot」の活用事例、実証実験についてご紹介されました。

製品紹介

Wi-Fi HaLow SoC、モジュール、評価・開発用製品について、それぞれの特徴や使用方法をご紹介し、目的に合わせてお客様システムに適した製品をお使いいただくことで、効率よく評価や開発が可能であると説明した。
・Morse Micro 「MM6108」
850~950MHzの周波数帯域と1/2/4/8 MHz帯域幅をサポートし、世界中で利用可能
ホストインターフェース:SDIO2.0およびSPI
・Morse Micro 「MM8108」
PA, LNA内蔵により、外付けのSAW Filterなしで地域調整が可能
ホストインターフェースにUSB2.0が追加
・メガチップス「MRF61_A_FL / TH」
アクセスポイント/ステーション両対応
シンプルな仕様により適正コストでシステムを実現可能
・メガチップス「MRF61_A_MCU_FLS / THS」
搭載MCUでセンサーなどを制御しお手軽に開発可能なステーション仕様
ソフトウェア開発キット提供可能

Traveling Pilot機能

・Wi-Fi HaLow (IEEE802.11ah)で初めて搭載された、ドップラーシフトの影響を軽減することでモバイル受信を改善する機能。
・チャネル推定に使用されるこれらのパイロット信号は、異なるサブキャリアで異なるタイミングで送信されるため、特にモバイル環境において受信側は変化するチャネル状況をより効果的に追跡でき、通信の信頼性とデータレートの向上に繋がる。
・この機能を活用したシステムとして、走行中のバスとバス停間で運行ダイヤ、時刻表情報を送信し、デジタルバス停(e-paper)の書き換えを行うことで、時刻表張り替え作業の自動化・省人化を実現するシステムを紹介。
・その他にも、自動搬送機器の走行制御、トラクターからの動画転送など新たな移動体通信システムを適正コストで実現可能になると説明。

*メガチップス様 講演資料のダウンロードはこちら


■ Wi-Fi HaLow(802.11ah)とVPNを活用した、広域監視カメラシステム

株式会社ビーマップ様 須田 浩史 様

Edgecore Networks社Wi-Fi HaLow対応製品とクラウド・コントローラー「ecCLOUD」の紹介、インターネットVPNによるIPカメラの課題解決事例についてご紹介されました。

VPNを活用した遠隔監視とセキュアな映像アクセス

・インターネットVPNにより、遠隔地のIPカメラの映像をインターネット経由で安全に確認可能。
・映像を常時ストリーミングせず、SDカードへの録画保存とVPNによる映像ダウンロードに対応することで、Wi-Fi HaLowアクセスポイントに接続できるカメラ台数の増加も実現可能(5台以上)。

クラウド管理プラットフォーム「ecCLOUD」紹介

・クラウド・コントローラー「ecCLOUD」を利用して、インターネット経由で機器の監視や運用ができ。最大50台まで無料でクラウド利用が可能。
・機器障害のメール通知、ダッシュボード機能、VPNトンネル制御などを提供。

IoTゲートウェイ「EAP112」、IPカメラ「BL100」紹介

・IoTゲートウェイ「EAP112」
Wi-Fi HaLowの他に、BLE、Zigbee、Thread、MatterなどのIoT規格、Wi-Fi 6、LTE Cat6など多様な通信方式に対応。Matterコントローラー機能を搭載しており、在室センサーや調理放置警報センサーなど多種多様なデバイスと連携可能。
・IPカメラ「BL100」
IP66の防塵防水性能を備え、-20℃から50℃の動作温度に対応。映像は有線LAN接続時1080P@30fps、Wi-Fi HaLow接続時720P@5fpsで、SDカードに高解像度で録画可能。

広域監視の具体的な活用例

・駐車場、通学路、太陽光発電施設、農作物、河川などの広域なエリアでの遠隔監視に活用。
・光ファイバやLTE回線を併用し、固定回線不要の柔軟な構成が可能。

*ビーマップ様 講演資料のダウンロードはこちら


■ Wi-Fi HaLow(802.11ah)を利用したユースケースの紹介

株式会社コンテック 日比野 一茂 様

IEEE802.11ahの特徴と活用が期待されるユースケース、IEEE802.11ah対応製品をご紹介されました。

ユースケース

・海上の作業船の稼働情報データの収集
海上と陸地間の通信を無線化し、建設機械の稼働状態監視やメンテナンス計画の最適化に貢献
・IoT活用による橋梁の維持・老朽化管理
IoTセンサーとの組み合わせで橋梁の常時モニタリングを低コストで実現し、点検作業の負担を軽減
・ハウス栽培のIoT化による生産性向上
ハウス内の状態の見える化や遠隔・自動制御により、労働時間の短縮や生産性の向上を実現
・道路を挟んだ建物間の通信を実現
行政の許可が必要な道路工事を行うことなく、建物間の通信を低コストで実現

コンテック社製品紹介

・無線LANコンバータ
ステーション(子機)とアクセスポイント(親機)を切り替え可能で、平置きだけでなく壁面や天井にも設置可能。
・無線アクセスポイント
1つのアクセスポイントで最大498台の子機を接続でき、リピータ機能やメッシュモードを搭載。リピータ機能を利用することで、通信距離の延長が可能。

*コンテック様 講演資料のダウンロードはこちら

■ アンテナ組込みにおけるCAE解析プロセスの紹介

日星電気株式会社 望月 倫博 様

日星電気様の主要事業、アンテナ事業の特徴や実績をご紹介されました。

事業紹介

ふっ素樹脂、シリコーンゴム、光ファイバ関連の3つの技術を核に、電線ハーネス、光ファイバ、アンテナなどの開発、設計、製造、販売を行う。

アンテナ事業の特徴と実績

アンテナ事業の特徴としては、以下の点が挙げられます。
・多種材料によるアンテナ提案
板金、PCB、FPC、MIDといった顧客のニーズに応じた設計提案が可能。
・多周波対応のアンテナ設計提案
700MHzから10GHz帯域までのアンテナ設計が可能。
・アンテナ小型化
板金による3D設計、高誘電率樹脂、MIDなどを活用した小型化技術を持つ。実績として、長さで40%減、面積で64%減を達成した小型アンテナや、厚さ3mmのFPC低背アンテナなどがある。
このような特長と開発から評価までの一貫したサポート体制により、量産実績として、車載向けNAVIアンテナで月間1,000k本、PC用アンテナで月間300k本を持つ。さらに、3mおよび10mの電波暗室でのシミュレーション(HFSS)や3次元の利得測定などで、自社評価能力による電波の可視化フォローも実施しており、Wi-Fi HaLowをはじめ他LPWAやWi-Fi向けで様々なビジネスを行っている。

*日星電気様 講演資料のダウンロードはこちら


■ セミナー全体を通して

Wi-Fi HaLow(IEEE802.11ah)に興味・関心のある多くの方々にご参加いただき、講演終了後を含め、中には積極的に質問される場面も見受けられました。今回の協賛各社による11ah製品や技術の最新動向、実際の活用方法と導入メリットの紹介が、皆様が抱えるビジネス課題の解決手段の参考となり、11ahの導入や提案のきっかけとなれていれば幸いです。今後も、団体加盟企業間で協力し、国内外の企業や組織間での連携を深め、11ahのビジネス展開を加速させるための様々な広報活動を計画、実施していきます。