「Wi-Fi HaLow(802.11ah)アライアンスフォーラム in 台湾」参加報告

802.11ah推進協議会 台湾出張参加者

 AHPCでは昨年より利用可能となった802.11ah(Wi-Fi HaLow)について、その普及と多様な端末の商品化を促進するため、Computex2023の開催時期に合わせて、AHPC有志メンバで台湾出張し、台湾ベンダー及び台湾の通信事業者との意見交換を行った。
 なお、日本からの参加者はこちらから

■AHPCと台湾ベンダーとの交流会

日時:5月31日 9:30 – 17:00
場所:孫運璿科技・人文紀念館 (Sun Yun-Suan Memorial Museum)
スケジュールはこちらから

Newracomフランク氏の紹介による、802.11ahに興味を持つ台湾ベンダーとの意見交換会を行った。AHPCから日本の状況を報告するとともに、台湾ベンダー各社から802.11ahに対する取り組みの詳細の紹介があった。質疑応答を含め、活発な議論が行われた。

[開会挨拶]

● AHPC 小林会長

台湾側の出席企業様への挨拶とこの交流会の計画に協力していただいたNewracom Frank 様に感謝の意を示します。当協議会AHPCは日本国内主要キャリア/メーカ/新規ビジネスのメーカを集めて、国内外に802.11ah(以下11ah)を拡げるために設立されました。日本で、昨年9月に省令改正法令化されたので、日本全国に11ahを拡げたい想いです。

しかし、日本ではまだ11ah対応のサービスやデバイスが少ないことが課題であり、それをフットワークの軽い台湾ベンダー様と協力して新しいビジネス構築をしてゆきたい。そのためにこの場を設定させていただきました。ここで忌憚のない意見交換をして、11ahによるビジネスを加速させたい。

● Newracom VP Mr. Frank Lin

11ahによる新しいビジネスの開発に注力しています。 先週(5月24~26日)、日本で行われたWireless JAPANのAHPCブースはとても盛況だった。これは、日本での11ahへの期待の大きさ表すものであり、いち早く商業化ソリューションを作り上げたい。
ここで出来たコミュニケーションで皆様と新しいビジネスを創出したい。


[AHCPプレゼン]

● 無線LANビジネス推進連絡会 北條会長

日本における11ahの状況や日本の周波数割り当てプランの説明。特に11ah, 5G/Local 5G, WiFi-6E それぞれのチャンネル割り当ての状況について以下の通り説明。

・ 11ahは今までの通信方式の穴を埋めることができる通信方式となる。この11ahが利用可能となったことで、いろいろな目的に対し適切なワイヤレスソリューションを提供することが可能となった。
・ 11ahの特徴は以下の通り。
- 遠くまで飛ぶWi-Fi
- 動画が伝送できるIoT
- IPとの高い親和性から安価に構築できる
- Wi-Fiベースのセキュリティが利用できる

● 東日本電信電話(株) 渡辺部長

現在日本では労働人口の減少が大きな課題となっている。そのため無線ネットワークを使ったIoT活用が注目されている。IoT活用の実例を以下の通り紹介。
・ 河川水位のモニタリングをLPWA(LoRa)でネットワークを構築している。近年日本の災害が多くなっているので期待が高まっている。


・ モーションセンサで自動撮影を行い、そのデータをAI処理して有害鳥獣判断している。人が入りにくい場所(熊が頻繁に出没する場所等)への設置。“これらのシステムを11ahに変えると画像の解像度が上げられる。ユーザからは動画の要求も多い。"
・ 11ahを使った農業のIoT。農産品の栽培環境データと出荷データを集計し、データに基づく栽培の実現している。
・ Home Useには主に監視用として展開している。従来のWi-Fiに比べて、チャンネルも空いていて通信カバー範囲が広い。
台湾ベンダー様への期待は以下の通り。
・ 電波規格の変化に対するスピーディな対応
・ Friendly 且つ 高い信頼関係により、協業して大きなビジネスを構築したい。

● 株式会社フルノシステムズ:藤井室長

「日本市場の状況と台湾メーカへの期待」と題して、11ah製品のユースケースや11ah製品ラインナップの状況、台湾メーカに期待する製品例を発表しました。

【現状の課題認識】
・ 共通の社会課題は少人化、日本の出生数は80万人で台湾よりも少なく、今後労働人口はますます減っていく。
・ 11ahにもIoTと同様の要求があり、例えば教育分野の例として、郊外授業では11ahを活用して教室と同じようなWi-Fi環境構築が要望されている。
・ ユースケース実現に向けて、現在の製品ラインナップを拡張していかないと、様々なニーズに応えることができない。
次に、現在の11ah製品の状況と今後求められる製品仕様・製品例を発表しました。
【11ah製品に求められること】
・ 現在は、11ahのゲートウェイとして、各種インタフェースを持ち、様々なIP機器をLANで収容して11ahで飛ばす製品になっている。また、直接11ahに収容できるのはネットワークカメラが中心である。11ahが爆発的に増えるためには、ホームユースが期待される。各種のセンサ、カメラなど、ここに台湾メーカの協力を期待したい。BLE、Wi-Fiなどのコンバータ(ゲートウェイ)も想定される。簡単設置、電源不要(電池)も重要である。工場などでは、アナログメータを解像度高く撮影してデジタルで送るニーズがある。
・ 機器内蔵の場合、Windows PCではLTEモジュールと交換可能なタイプ、ドライバーのサポートも必要で、その他省電力やインタフェースの豊富さも必要である。
・ 日本では10%dutyの仕様だが、すでに台湾メーカと実現しており、課題ではない。
最後に、先日開催のワイヤレスジャパン2023の様子を紹介し、従来のLPWA(LoRa、Sigfoxなど)と比べても11ahへの期待値が高いことを紹介しました。

● 株式会社ビート・クラフト:竹本社長

株式会社ビート・クラフトの竹本様より、「Our expectations to Taiwan Companies」と題して、11ahを活用したユースケースや想定されるキラーアプリについて発表しました。


TELEC認証済の11ahモジュール、評価ボードを紹介(加速度センサ、温湿度センサなど搭載、Newracomチップ)、具体的なキラーアプリケーションの検討について紹介しました。
【ユースケースとキラーアプリケーション】
・ 農業では肥料のコストアップが大きく、有機農法にしないと採算が取れない実態がある。ドローンの活用が必要。日本の農業はこれから大規模化していく。11ah活用で無線ゲートウェイの台数は削減できる。ゲートウェイ+Bluetoothを11ahに変えていく。
・ 大災害の発生時、人が立ち入ることができない建物の検査が必要だが、ロボット操作やその通信手段として11ahが使えないか。
・ 鉄道、電気自動車の充電など、アプリケーションを作っていきたい。

[台湾ベンダプレゼン]

● Senao Networks Inc

2006年にSenao International社から独立。製品としては、Wi-Fi-AP、スイッチ、5Gルータ、IPカメラ、NAS等がある。AIoT(AIとIoTの組み合わせ)ソリューションとして、茶畑に設置されたエアセンサ とIP Camera の情報を11ahで取得し、研究所で解析、予測を行っている。

● Reyax Technology Co. LTD.

社員数が十数人の会社で、多彩な無線方式を組み合わせることができるよう、多くの無線方式の開発スキルを持つ(GNSS, Wi-Fi, 11ah, NFC, LoRa, RFIO, UWB, BLE, UHF, 4G-LTE等)。現在はスマートロックやヘルスケア分野にもフォーカスしている。
11ahはデータ転送量のメリットから、LoRaに取って代わる通信手段として長距離イメージ転送、鉄道やバス交通の制御、Green & Energy storage システムへの応用が可能と考えている。また、RFIDのビジネス領域でも広いサポートエリアのため11ahと共用していけると考える。

● Industrial Technology Research Institute (ITRI)

台湾における農業IoTでは、センサノードは約10M台あり、農業用IoTのメインはLoRaが使われている。活用の例としては、
・ 土壌監視システム : 雨量センサ、土壌の水分量計測(機器メンテナンス 1回/2年)
・ Weather Station(LoRaとWi-Fiを使った各種センサHUB)を使い、水量・モータポンプ制御・弁制御やデータ取得での天候予測
・ ビニールハウスの管理 日照時間 温湿度 二酸化炭素 土壌環境 室外環境の測定と統計化
LoRaによる農業IoTはいくつものメリットを見せてはいるが、11ahの農業用IoTとしてはLoRaのリプレイスになるだろう。

● Askey Computer社

【11ah製品のユースケースと製品例】
・ 火山観測:11ah、Bluetooth、Zigbeeを収容するIoTゲートウェイとしLTE-Mのネットワークに収容する。
・ スマートパーキングシステム:現在は人が30分ごとに巡回しているのをNB-IoT ⇒ 11ahのゲートウェイを活用してランニングコストを削減。
・ ネットワークカメラ:23年6月リリース
・ IoTゲートウェイ(11b/g/n、BT4.2、11ah)、USBドングル:来年開発予定(市場調査中)

● Brickcom社

Brickcom社は低消費電力、IPカメラ、クラウド、情報ソリューションに強みを持ち、社員の70%がR&Dに属しています。11ahはIoTの中心として期待がされ(遠くまで届く、省エネルギーなど)、幅広い応用が可能と考えています。
【11ah製品のユースケースと製品例】
・ AIドアホン:ドアロックの制御や生体認証
・ Wi-Fi Battery Camera
・ 各種センサとしての活用:水漏れ検知SOL、煙・CO/CO2検知SOL
・ 2022年HaLow カメラ(ソーラーパネル付き)を提供、配線工事が不要でWi-Fi認証済(農業、林業、漁業などでの配線レスニーズを想定)

[フリーディスカッション、Q&A]

⇒ 詳細内容はこちら

[クロージング(AHPC:小林会長)]

本日は長時間ありがとうございました。普段Competitor同士の各社が、積極的にアイデアを出し合って盛り上がれるか不安もありましたが、それは杞憂でした。台湾メーカ各社から、たいへん貴重な話をしていただき本当に感謝申し上げます。これからも引き続きよろしくお願いします。
台湾メーカとの付き合いは長いが、「こういうことをできますか」と聞いて、できないと言われたことは一度もありません。このフォーラムを主催したNewracom社のFrankさんをはじめ、各社のみなさんに深く感謝します。ありがとうございました。


■ITRIとのミーティング

日時:6月1日 9:30 – 12:00
場所:ITRI(新竹オフィス)
スケジュールはこちらから
 
今回の台湾出張について、台湾側としてスケジュール調整や会議場所の準備などの対応をしていただいた台湾工業技術研究院(ITRI)の新竹本社の見学並びに802.11ahに対する意見交換を行った。

[ITRIショールームガイドツアー]

私たちが最初に通された場所は、吹き抜けに大木を思わせるオブジェが鎮座する展示コーナーでした。「エコロジーツリー」呼ばれるこのオブジェは、様々な最新技術が搭載されているそうです。天窓には透明な太陽光パネルが設置され、太陽光を透過させながら、このオブジェに電力を供給しています。幹には空調ファンがあり空気を循環させ、蒸散効果などにより室内の温度を一定に保ちます。根元には排水をろ過する大きなフィルター装置があり、きれいな水をエコロジーツリーに循環させています。

 次に、通された部屋は上から見ると扇型の形状をしたシアターです。プロジェクションマッピングにより180度のワイドな映像が投影できます。最初にITRIの副院長より歓迎の挨拶がありました。次に今回のITRIツアーをアレンジいただいたロバート氏にITRIの取り組みを紹介していただきました。ITRIは政府の研究機関で、6000人の研究者が働いているそうです。なんと、そのうちの8割以上が修士号・博士号を取得しているそうです。
まさに、台湾の頭脳と言える研究機関なのです。そして、ITRIは研究成果を積極的に民間企業に技術移管しています。今でこそ世界最大のファウンダリであるTSMCも、ITRIの小さな建物から出発したそうです。その後も、ITRIからいくつもの先進的なベンチャー企業が育っていったそうです。
続けて、ロバート氏から台湾製品の世界シェアについて説明がありました。スマートフォン向けSOC、Wi-Fiルータ、セットトップボックス、サーバのシェアが世界一なのだそうです。世界のスマート社会を支える多くの製品が台湾企業から供給されているのですね。続けて、再先端の技術分野からO-RAN、低軌道衛星、安全なサプライチェーン、光コンピューティング、AI実装などの取り組みを説明いただきました。

ロバート氏のプレゼンの締めくくりは、台湾国旗と日本国旗の鉢巻をした2匹の猫のイラストともに「一緒に頑張ろう~!」「一起加油~!」とのメッセージ。一同から笑顔がこぼれました。世界の最先端を走っていた日本が、台湾に追い越されたのはいつのことでしょうか。日本も台湾の友達に負けていられません。かつて台湾が日本から学んだように、我々も台湾の友人から学び、ともに未来を開拓しなければなりませんね。

[ICL(ITRI情報通信研究所)とのミーティング]

● AHPC小林会長

802.11ahが伝送距離と通信速度のバランスにおいて他の通信方式委よりも優れた点があること、台湾からより多くの11ah対応デバイスが供給されることへの期待を伝え、率直な意見交換を行いたい。

● Wi-Biz北條会長

日本における11ahの周波数割り当てや、11ah対応製品による実測値について説明されました。デューティーサイクル10%の規制はあるが、端末当たり安定して300kbpsの通信速度が維持でき、端末が増加しても1台当たりの速度に変化がないことが確認できたそうです。

また、11ahはWi-Fiファミリであることから、WPA3の暗号が利用でき、IP通信が使え、安全で安価にIoTシステムが構築できることが説明されました。

● ITRIウェン氏

11ahの応用事例として、輻射交換システムでの11ahの活用についての説明がありました。輻射交換システムとは、室内の温湿度を、風を使わずに均一に保つための仕組みで、熱交換パネルに冷水や温水を通すことで、輻射熱により室温を制御します。室温を均一に保つためには、センサネットワークによる温湿度のリアルタイムにモニタする必要があります。

ウェン氏は、802.11ahが伝送距離と速度において最適なLPWAであると判断し、実験に採用したそうです。また、使用した802.11ahのセンサノードは、802.11ahのモジュール以外にもAD変換チップやRS485のインタフェースが搭載され、既存のセンサや測定機器を接続することが可能で、ノードの制御には、様々な機器やセンサを統合的に管理するために開発された監視モニターシステムを使用したそうです。
このシステムは、Webインタフェースによりノードの状態や設定の変更、センサの値などが、単一のUIから操作・確認することが可能で、グラフ表示も可能です。また、無線ソリューションが、ローカル5G、Wi-Fi、11ahであってもであっても、IP通信が可能であれば単一のシステムで管理できるそうです。まさに、11ahがIP通信を使ったLPWAであることから、既存のシステムを活用できるという利点を生かしていると実感しました。
ウェン氏のチームでは、802.11ahの伝送距離と速度の計測を行ったそうです。ビルの5階に11ahのアクセスポイントを設置し、同じ階の100m離れた部屋と、3階、1階で計測したところ、いずれも3.4Mbps前後の速度が確認できたそうです。デューティーサイクルの制限がない台湾では、11ahの速度がフルに利用できてうらやましい限りです。日本でも、デューティーサイクルが不要な新周波数が割り当てられることに期待したいと思います。

● 質疑応答

質疑応答では、11ahを使ってみて課題や改善点がないかとの質問がありました。それに対して、ウェン氏から、「11ahは他の無線方式と変わらないくらい手軽に使用することができた」、との回答がありました。また、他の無線ソリューションのように、信号強度を可視化するツールの充実が必要と感じているそうです。その後も、AHPSのメンバから多数の質問があり、活発な質疑応答が行われました。


■CIAT 5G IoT SIGとのミーティング「台日連携ビジネス交流会」
  (+台湾ベンダプレゼン/機器展示)

日時:6月1日 14:30 – 17:00
場所:CIAT(雲協@台北)
スケジュールはこちらから

ITRIロバート氏のアレンジでCIAT(Cloud Computing and IoT Association in Taiwan)とのミーティングを行った。CIATは、クラウドコンピューティング及びIoTに関して、台湾経済部の指導の下、国内キャリアを支援するために設立された組織で、台湾の通信キャリア(中華電信やFar EasTone等)を含む関連団体が参加し、いわゆる台湾国内のIoTを推進する組織である。

[開会挨拶]

● CIAT Executive Director Robert Hsu(ITRI)

今回は、CIAT(Cloud Computing & IoT Association in Taiwan)5G IoT SIGとの間で「台日連携ビジネス交流会」として11ahについての意見交換会を行いました。11ahに対する期待として、「台湾はWi-Fiデバイスの66%を出荷しているとともにWi-Fiの普及率も非常に高く、Wi-Fiファミリである11ahに非常に期待しているが、まだ国内での知名度が低い状況であり、今回のミーティングで有意義な意見交換ができることを期待している。

● CIAT 5G IoT SIG Chairman Philip Tseng氏(FET Executive Vice President)

「CIAT 5G IoT SIGは台湾のIoTメーカを世界に橋渡しする役割を担っている。メンバには、中華電信のようなキャリア、Microsoftのようなソフトウェアメーカ、OMPALのようなデバイスメーカが入っている。ミッションとして大きく、「O-RANの開発」、「5G NWのアプリケーション開発」、「製造から海外進出までの一貫したサプライチェーンの構築」の3つがある。11ahについてはまだ台湾では普及していないが、IoTの1つのメニューとして今後進めていきたい。

● CIAT総幹事 Jethro Chen氏

CIATのミッションは、5G、AI、サイバーセキュリティ、ドローンを推進すること。メンバは180社弱であり台湾企業の海外展開を推進している。展示会を通して情報収集やビジネスマッチングをしている。東京でも毎年「Cloud Computing Day Tokyo」を開催している。また台湾政府に対して情報セキュリティNWアプリケーションなどの提言もしている。

● AHPC 小林会長

Wi-Fiは今まで2.4GHz、5GHz、6GHz、60GHzを使ってきた。一方の携帯電話はプラチナバンドと呼ばれる700M~900MHzを使っておりどうしても飛ぶ距離に差があった。しかし11ahは920MHz帯を使えると言うことでやっとで周波数的には携帯電話と同等になった。11ahは今までのWi-Fiより10倍飛び、今までのLPWA(Lora、Sigfox)より10倍速い。またWi-Fiと同じ802.11なのでWi-Fiで使っているプロトコルがそのまま使えるとともにセキュリティもWi-Fiのものがそのまま使えるために高い。

今回、台湾のCOMPUTEXに行ってIoTの展示を見たが、まだ11ahは展示が少なく改めてまだ認知度が低いことが分かった。例えばスマートホームのような大きなマーケットがあるのに今までは繋がる仕組みが不十分で普及していない。そのようなマーケットに11ahは適していると思っており、ここにいる皆さんで推進していきたい

[キーノートスピーチ:CIAT]

● FET Director of IoT Rick Chang氏

FETではビッグデータ、サイバーセキュリティ、マネジメント、5Gなど様々なことに取り組んでおりその実例としてスマート交通、スマートシティ、スマート医療を行っている。スマートシティでは電気自動車の充電設備、スマートメータの設置を行っておりスマートメータは157万台導入し、さらに800万台設置する予定。

また、一つの市で8万台のスマート街灯を設置している。その他にも信号機、シェアバイクなど、全てNB-IoTやLTEを使ってNW化されている。Lora等の通信も使ってみたが、品質上NB-IoTとLTEをメインとして他の通信は補助的に使うことになった。また5G NWでは、AIを使ったカメラでの路上監視、スマートパトカー、遠隔医療も行っている。スマートパトカーではカメラによるナンバープレートの識別をしており、盗難車の発見が今までの100倍になった。
しかしながら現在の課題として、IoTの数の増加に伴うコストの増加、技術者の不足、構築コストの増加、インフレによる物品費の上昇、エンド-エンドでのセキュリティの確保があり、その対策が必要となっている。

[台湾ベンダプレゼン]

● ALFA NETWORK社

11ahのモジュールを製造しており、様々なインタフェースに対応可能。11ahのゲートウェイも作っており今年7月に家庭向けの製品を出す。USBドングルタイプの11ahモジュールもある。

● Azure Wave社

11ahの通信モジュールを開発している。すでにTELEC認証を取っているモジュールも存在。

● Brickcom社

Smart Home IoTソリューションとして、ワイヤレスと省電力スマートホームソリューションに注力。防犯カメラ、ドアロック、水漏れ検知、自動ブラインド等、ワンストップで提供。日本では夕張メロンやカキの養殖でカメラソリューションを提供している。

[キーノートスピーチ:AHPC]

● AHPC鷹取副会長

今までワイヤレスはスマホに引っ張られてきたが、今後はスマホ以外のドライバーが必要である。一方、日本では人口減少、高齢化が大きな課題であり、その対策として食料・農業生産の効率化、スマートシティ化、中小企業のDX化などがあげられており、ワイヤレスの重要性が増している。

日本のワイヤレスとしてはモバイル、Wi-Fiなど多様なアクセス手段があるが、11ahはそれらがカバーできなかった領域を埋めることが可能。11ahの特徴としては、カバレッジの広さ、映像伝送が可能な帯域、構築の簡便さ、低消費電力、LPWAと比較したセキュリティの高さ、遅延の短さがあげられる。それらの特性を利用して、例えば宅内でのNW化や、スマート農業への適用が考えられる。
日本政府も11ahの普及を後押ししており、地方にソリューションを展開するための補助金を提供している。
11ahの次のステップとして、920MHz帯以外に周波数を拡大したい。現在、850MHz帯、930MHz帯の周波数取得を目指しており、これにより、より速度の速いサービスが可能となる。
一方、11ahの課題としては搭載された端末がまだ少ないことである。端末の多様化がサービスの展開に必要であり、それによる市場の拡大、コストの低減というサイクルが出来上がると良い。そのために台湾の企業の皆さんには是非ともご協力をいただきたい。

[意見交換及びQ&A]

⇒詳細内容はこちら

[クロージング(AHPC:小林会長)]

規格はできたが端末が十分にないのが11ahの課題。例えば、家庭内NW、産業分野、工業分野、牧畜、スマートオフィスなど、11ahのターゲットマーケットはたくさんある。今はカメラが先行しているが、それ以外の端末が必要であり全て一遍にという訳にはいかなくても、モノ作りが得意な台湾メーカの皆さんに端末を増やすことに協力してもらいたい。

■全体まとめ

・ 台湾の各ベンダーは11ahへの興味も高く、日本の市場に対する関心も高い。
・ いずれのベンダーも今後日本に進出していく意向を示していた。
・ 台湾国内のIoTについては、4GのNB-IoTを活用している事例が多く、アンライセンスバンドを活用するLoRaやSigfoxの事例は極めて少ない(Computex2023でも同様)。
・ 2日間の会議及び懇親会を通して、台湾企業の活力を感じることができた。11ahに対しては前向きであるため、今後も継続的に連携を深めることが重要。
・ 特にアンライセンス(多分LoRaなど)については、セキュリティについての懸念について問題になっているようだった。この点については、11ahはWi-Fiと同様のセキュリティが確保されているので、11ahの優位点となる。