802.11ah推進協議会 第9回総会開催報告
802.11ah推進協議会
広報・普及TG
2025年12月5日(金)、TKP秋葉原カンファレンスセンター(カンファレンスルーム3A)にて、802.11ah推進協議会(以下、AHPC)第9回総会を開催しました。
対面およびWeb会議形式を併用したハイブリッド形態で実施し、多数の来場者に参加頂きました。
総会会場の様子
● 開会挨拶
○ 802.11ah推進協議会 会長 小林 忠男
開会挨拶(小林会長)
AHPCは発足から7年、Wi-Fi HaLow(802.11ah)の制度整備、エコシステム形成、国際連携を継続して進めてきました。920MHz帯での実装実績を積み上げるとともに、850MHz帯の制度化に向けた議論も本格化しています。
日本と台湾の企業・研究機関を結ぶハブとして、人材・技術・知見を蓄積してきたことは大きな財産です。市場の本格立ち上がりに備え、AHPCは今後も会員とともに主体的に行動し、HaLowの社会実装と事業化を前に進めていきます。
● 来賓ご挨拶
○ 総務省総合通信基盤局 電波部 移動通信課長 五十嵐 大和様
来賓ご挨拶(総務省 五十嵐課長)
920MHzではスマートメーター向けなどでLPWAが小容量通信用途に使われてきたが、市場からはカメラデータ等の中容量通信が求められていた。802.11ahはそのニーズを満たせるものであり、920MHz帯を承認した。
MCA跡地である850MHz帯について検討の結果、802.11ahの利用について2025年10月に答申が終了し、今後正式発表を行う予定である。AHPC会員皆様には、今後のデジタルトランスフォーメーションのためにぜひ活用いただきたい。
MCA跡地の900MHz帯利用については、AHPCを含めて様々なところが手を挙げている。今後電波有効利用委員会にてヒアリングを実施するため、ご協力を仰ぎたい。
○ CIAT(台湾クラウド&IoT協会)Robert Hsu様(メッセージビデオでのご挨拶)
来賓ご挨拶(CIAT/ITRI Robert Hsu様)
CIAT(台湾クラウド&IoT協会)を代表して、AHPCが、来年も会員数の増加、国際的な認知度の向上、技術推論の強化により継続的に成長することを願っています。過去1年間、私たちはAHPCとの連携の枠組みを通じて802.11ahとその製品開発を推進してきました。
サプライヤとユーザ、ハードウェアとソフトウェアの開発者が協力し、革新的な技術と新しいユースケースを生み出しているのを見るのは素晴らしいことです。
今後も、AHPCと協力を継続し、2026年に802.11ahのワークショップやフォーラムを台湾で共催したり、CIAT会員や台湾のパートナーが日本でのデモやショーケースに参加したり、さらには来年台湾で850MHzトライアルを開始するなど、私たちは、共にさらなる飛躍を遂げるのを楽しみにしています。
● 各TG活動報告及び今後の活動プラン
○ νLab活用TG :土戸 研一
νLab活用TG(土戸様)
(2025年度活動実績)
・来訪者累計7,000名超(2026年に1万人突破見込み)。
・展示リニューアル実施、今後も体験型デモを拡充。
・内覧会開催(55名参加)、高評価(75%「非常に良かった」)。
(2026年度の活動計画)
・vLabにおける850MHz実証環境構築。
・相互接続試験の新スキーム策定。
・人材育成・技術者交流強化。
○ 広報・普及TG :東郷 大輔
広報・普及TG(東郷様)
(2025年度実績)
・国内外展示会出展(Wireless Japan、COMPUTEX、AIoT Taiwanなど)。
・セミナー登壇(総務省、ZETA Alliance等)。
・ユースケースブックレット、製品ポートフォリオ公開。
・HaLow Café定期開催(技術議論・実証紹介)。
(現状の課題)
・802.11ahの知名度不足、通信距離不足、STA製品情報不足、民生ニーズ低迷等。
(2026年度の活動計画・今後の対応策)
・ワイヤレスジャパン以外の展示会への出店・SNS発信強化。
・850MHz帯台湾トライアル結果発信。
・ユースケースセミナー開催。
○ 国際アライアンスTG :山田 徹
国際アライアンスTG(山田様)
(2025年度活動実績)
・CIATとの協働(COMPUTEX、AIoT Expo、合同セミナーなど)。
・2026年2月実施予定の850MHz台湾トライアル準備。
・ビジネスマッチングプラットフォームの試験運用開始。
・Wi-Fi Alliance/WBA(Wireless Broadband Alliance)との連携深化。
(2026年度計画)
・アライアンス深化、PoC実施、海外制度調査。
・ビジネスマッチングプラットフォームの本格運用。
○ 周波数拡大・機能向上TG :長坂 康平
周波数拡大・機能向上TG(長坂様)
(2025年度活動実績)
・802.11ahの850MHz帯獲得に向けたパブリックコメント対応(全提出数:33件)。
・802.11ahにおける海外制度比較、日本制度の課題整理。
・850MHz帯活用を想定したユースケースのとりまとめ。
(2026年度計画)
・850MHz帯利用にあたっての登録局申請試行、干渉回避技術開発。
・ユースケースの開拓やPoC案件の拡大に向けた取り組み。
・2029年6月の制度運用開始に向けた総務省との議論。
● 「HaLow Market Insight 2025」
○ 802.11ah推進協議会 会長 小林 忠男
HaLow Market Insight 2025(小林会長)
①2025年度の総括
・静かな 加速期に突入
・AHPC会員数:90団体(正会員30、準会員43、特別会員16)
・νLab来場者:約12,000人(前年比+380%)
・製品出荷:約6,000台(前年比+200%)
②エコシステム拡張
・台湾企業20社以上がAHPCに加入、村田製作所・SUNMIの市場参入。
・νLab展示リニューアル、ユースケースブックレット更新。
・CIATとのワークショップ・フォーラム開催。
③HaLowの価値
・5GやLPWAをカバーできない領域である空白地帯を埋める唯一のシステム
→広域通信、省電力、多台数接続、映像伝送、免許不要等の様々な特徴を持つ。
・AI・ロボティクス・屋外IoTを支えることができる唯一のシステム
④920MHzの現状と課題
・3つの壁である10%のDuty制限、20mW出力、920MHz帯の共有バンド利用がある中でも、適切な設計・実装ノウハウで十分使えることを実証した成功事例が大きく増えた。
→ 設計・運用ノウハウで十分活用可能である。
⑤850MHzの可能性(未来の核)
・2026年春にデジタルMCA無線と共用する前提で制度運用開始(Duty制限なし、最大200mW、BW最大2MHz)し、2026年夏ごろには850MHz帯向け技適取得済み対応製品が発売される見込みである。
・デジタルMCA無線のサービス終了後の2029年6月に正式に制度運用開始予定(BW最大8MHz)である。
→ 性能向上で新市場創出するためにも、台湾トライアルが鍵となってくるとのこと。
⑥海外動向
・米国では物流・自治体・工場で本格利用。
・台湾では政府協力の元、国レベルでHaLow導入が進行。
・EUではスマートシティでの需要が高まり、規制緩和の動きが出ている。
・中国ではSUNMIの参入など、リテールで大量導入の兆しが見られる。
⑦日本市場の評価
・遅れてはいるが、環境整えば一気に立ち上がる市場である。
・品質要求、社会実装力、きめ細かいシステム構築等の多様性がある。
⑧920MHzから850MHzの連続戦略
・920MHzで信頼構築 → 850MHzで市場拡大を狙う。
・日台連携・制度対応が成功の分岐点である。
⑨AHPCの今実施すべき3つの行動
・920MHzのDuty・出力・占有帯域の「課題改善提案」を市場に対して行う。
・850MHz普及に向けた商用事例形成(日台共同)。
・νLab公式ショールーム化やWireless Japanなどで社会実装モデルを発表する。
● 決議事項及びAHPC組織運営
議長:802.11ah推進協議会 会長 小林 忠男
議事説明:802.11ah推進協議会 運営委員 北條 博史
➀監事の選任について
・小川氏(エイチ・シー・ネットワーク社)の選任について、満場一致で可決した。
②会計報告及び来年度予算計画
・2025年度(2024年10月~2025年9月)の会計報告とともに、会費有料化に伴う会員数の推移や貸借対照表などの説明があった。
・各委員会からの予算要望に基づく次年度予算計画についても提案があり、承認された。
③新旧監事のご挨拶
・7年間AHPCの監事を務められた岡村 聖司様と新任の監事の小川 大豪様からご挨拶をいただきました。
退任された岡村監事と新任の小川監事
● 特別講演
○ NTT東日本株式会社 ビジネス開発本部無線&IoTビジネス部 仲野 陽介様
特別講演(NTT東日本 仲野様)
テーマ:無線(802.11ah)+DXソリューションの最新事例 今後の展開について
➀ NTT東日本の取り組み
・ネットワーク技術+DXソリューションで地域課題解決を目指す。
・光回線・VPN・Wi-Fi・ローカル5G・LPWA(802.11ah)を組み合わせたプライベートネットワークを提供。
・サイバー×リアルの連動(3Dデジタルツイン)でスマートシティ・製造・物流・農業など幅広い分野に展開していくとのこと。
② 802.11ah活用事例
事例①:水道機場における点検DX
・水道機場では、数多くの設備に対し人手により多くの稼働をかけ日々点検業務を実施しているため、カメラ・センサー・AIの活用によって業務効率化を実施。
・処理棟内では光回線が未整備の状態であり、広大な敷地であるためキャリア電波が届かない。
・電源を取れる場所も限られているため、広域カバーできる802.11ahに優位性がある。
事例②:河川監視・防災
・LoRaカメラと比較し、802.11ahカメラは高画質であり、夜間の視認性でも優位。
・デジタルツインによるリアルタイムな街全体の見える化、防災ソリューション強化。
・MCA無線終了に伴い、802.11ahを防災通信代替手段として検討。
③今後の展開
・自治体向けマルチユースケース(防災、河川監視、積雪監視、避難支援、インフラ監視)。
・NTT e-City Laboを実証・事業創出の場として活用。
・802.11ah+AI+クラウドで地域循環型社会の実現を目指す。
○ Newracom Inc. VP of Global Sales & Marketing Frank Lin様
特別講演(Newracom Frank Lin様)
テーマ:Wi-Fi HaLow市場の成長とNEWRACOMの技術戦略
➀市場動向
・Wi-Fi HaLow のIoT市場は急成長中であり、2029年までに1億台以上のデバイス出荷予測。
・モジュール市場は2031年に17.6億ドル規模になる予想。
②技術特徴
・長距離・低消費電力でLPWAとWi-Fiのギャップを埋める。
・NRC7394 SoCは世界最小サイズで全周波数対応、17dBm PA搭載。
・HaLow 2.0は周波数自動切換えやマルチキャスト対応等、実環境での実用性重視。
③製品展開
・NECマグナスコミュニケーションズのLTEルーターであるuM350Rに搭載。
・村田製作所と連携した802.11ahモジュール生産(2025年末量産予定)。
・SUNMIの機器に802.11ahを搭載することで業務IoTに活用。
○ Morce Micro inc. 日本担当カントリー・マネージャー 大石 芳和様
特別講演(Morse Micro 大石様)
テーマ: Wi-Fi HaLowの世界的潮流と今後の可能性
➀Wi-Fi HaLowの技術優位性:
・他の長距離無線技術より高いデータレート。
・従来のWi-Fiと比較してサブGHz帯を利用しているため、優れた障害物透過性やカバーエリアが広大である。
・エッジAI、スマート農業、スマートグリッドなどIoT2.0における高度なユースケースに対応。
②日本市場における課題と実証実験について
・Duty制限によるスループット制約があるが、バーストモードと使い分けることで幅広いニーズに対応可能。
・また埼玉の集合住宅、広島の学校、山梨の観光施設、宇都宮の水処理場で実証を行ったが、920MHz規制下でも広域カバーを確認。
③製品展開
・2025年に世界初のグローバル認証済みHaLowモジュールであるMM8108を発売。
・2026年Q1にはセキュリティ性が高いWi-Fi HaLowチップを発売予定。
○ 802.11ah推進協議会 運営委員 東郷 大輔
特別講演(AHPC 東郷運営委員)
テーマ:Wi-Fi HaLow(IEEE802.11ah)850MHz帯について
➀背景
・MCA無線終了に伴い、850MHz帯の再編が進行。
・2026年春に850MHz利用開始予定、2029年正式制度化。
②技術仕様(予定)
・現行20mWの出力が、850MHz帯利用時には200mWにも対応。
・帯域幅は、最大8MHzであり、Duty制限なし。
・通信距離は、200mW時に最大約3kmを想定。
③期待されるユースケース:
・スマート農業・林業における広域センシング、映像伝送、音声通話。
・スマートシティにおける街全体のメッシュ化、照明制御、交通情報。
・ドローン、AGVなどの移動体制御向け通信。
・台湾トライアルでは、オフィス・養殖場・農場でPoCを実施予定。
● 閉会挨拶
○ 802.11ah推進協議会 運営委員 川地 耕二
閉会挨拶(川地運営委員)
長時間にわたりご出席いただきありがとうございます。また総務省の方々もお越しいただき、まことにありがとうございます。
現在は、Wi-Fi黎明期のような問い合わせの増加を802.11ahも経験しており、850MHz帯利用によってさらなる爆発が起こることに期待を持っています。
AHPCのコミュニティを利用することで実現可能なアイデアの持ち寄りなどに期待しています。
● 懇親会
総会後は同じTKP秋葉原カンファレンスセンターにて懇親会を実施しました。富士通クライントコンピューティング社小中様の乾杯のご発声によりスタートしました。
乾杯のご発声(FCCL 小中様)
また、この日海外からお越し頂いたNewracom社、SUNMI社の方々にご挨拶頂きました。
ご挨拶(左からNewracomのJ.S.Yoon博士、Frank Lin様、SUNMIのLi Xiaojun様)
その後、普段お会いする機会が少ない会員メンバー同士の交流が行われ、今後の更なるWi-Fi HaLow普及を目指して、AHPCの活動を進めていくとの決意を新たにしました。
中締めは、NTT東日本土戸様にご挨拶頂き、恒例の一本締めにてお開きとさせて頂きました。
中締め(NTT東日本 土戸様)
以上