802.11ah推進協議会(AHPC)第7回総会開催報告


広報普及タスクグループ
三宅 伸明
萩野 亮児

2024年12月13日(金)、TKP秋葉原カンファレンスセンター(カンファレンスルーム2A)にて、802.11ah推進協議会(以下、AHPC)第7回総会が開催されました。対面およびWeb会議形式を併用した形で実施され、多数の来場者が参加しました。


開会挨拶

802.11ah推進協議会 会長 小林忠男より、AHPCの活動の振り返りと今後の取り組みについて説明がありました。

開会挨拶(小林会長)

6年前の今頃、初めて総会を開催し、取り組みを開始しましたが、おかげさまで2年前に920MHz帯が日本で利用可能となり、さらに、新たに850MHz帯の周波数拡大について総務省と協議を進めています。今回、コロナの影響もあり久しぶりに総会後に意見交換会も開催されるため、多くの意見を伺いたいと述べられました。

来賓挨拶

オンラインにて、総務省 新世代移動通信システム推進室 室長 影井様よりご挨拶をいただきました。
920MHz帯のアクティブ小電力無線は、スマートメータやセンサネットワークに加え、映像伝送やロボットのファームウェア更新など、広帯域用途への需要が増加しています。このニーズに対応するため、総務省は令和4年に広帯域化を制度化し、850MHz帯を含むIEEE 802.11ah(Wi-Fi HaLow™)導入に向けた技術条件の検討を進めています。加賀市での実証実験や制度拡大に向けた取り組みも行われており、電波政策懇談会では将来像が議論されています。AHPCの活動により、WX(ワイヤレストランスフォーメーション)の実現に向けた技術開発と普及活動を期待したいとのお言葉をいただきました。

来賓ご挨拶(総務省 影井室長)

基調講演

早稲田大学 研究戦略センター 教授 稲田様より、「生成AIの動向と無線LANビジネスへの応用」についてご講演いただきました。
生成AIの特徴や活用法について、具体的な利用例を交えて説明がありました。現在、生成AIはレシピサイトや小論文の添削などに活用されており、汎用LLMに加え、自社特化型のRAGやカスタムLLMの開発が進められています。一方で、前例のない課題への対応やデータ品質の影響、多様性の欠如といったリスクに対し、適切に利用する必要があると指摘されました。また、802.11ahにおける生成AIの活用例として、不感エリアの確認、基地局配置の最適化、セキュリティ対策、システム障害の原因特定や早期復旧などが挙げられました。

基調講演(早稲田大学 稲田教授)

総会議事1「会計広報と運営体制」

北條運営委員より、会計広報および運営委員等の更新・変更について報告がありました。 会員数は設立時の56団体から、昨年から今年にかけて台湾の企業の参加が増え、現在190団体に達しています。また、会計報告、監査報告、運営委員選任についても報告がありました。体制については、小川様、須田様が運営委員に選任され、また第70回運営会において、運営委員の中から小林会長、鷹取副会長、アドバイザーの竹田様が再任されました。

総会議事1(北條運営委員)

総会議事2-1「AHPC活動報告と今後の展望」

小林会長より、AHPC活動報告と今後の展望について話がありました。 現在、AHPCではWi-Fi市場の拡大に対応し、802.11ahを活用した新たな市場創出を進めています。第一フェーズでは実証実験と法令改正に取り組み、第二フェーズでは商用化や事業拡大を目指し、vLabのリニューアルやCIATとの連携強化、850MHz帯の制度化を推進しています。会員数は56社から190社に増加し、製品数も11製品から25製品に拡大しました。実証実験を通じて、イニシャルコストやランニングコストの削減も実現しています。今後は異業種連携や新規パートナーの開拓、850MHz帯のパイロットプロジェクト(台湾)の実施、成功事例の共有などを進め、802.11ahを軸にさらなる市場拡大を目指すとのお言葉をいただきました。

総会議事2-2「持続可能なAHPC活動のための資金確保について」

小林会長より、持続可能なAHPCの活動のための資金確保について話がありました。 現在、AHPCはボランティアで運営されていますが、有料化の検討を行っており、参考のためにアンケートを実施する予定です。次回の臨時総会でその結果を報告したいとのことでした。

総会議事2(小林会長)

特別講演1

鷹取副会長より、「802.11ahのFuture MAP」について説明がありました。 新たな802.11ahの周波数帯として850MHz帯の利用が進められており、最大8MHz幅、最大200mW、Duty制限なしの要望がされています。また、下側の2MHz帯については移行期間中の早期利用開始を目指しています。Duty制限がなくなることで、1MHz幅の通信でもスピードやエリアが倍増するシミュレーション結果が出ており、920MHz帯と850MHz帯の併用により、新たなユースケースが広がり、市場に新たな価値創造が期待されます。また、802.11ahのIC、モジュールメーカーに対しては、MIMO/ダイバーシティ機能、超多数端末サポート、超低消費電力機能の実装に期待しているとのお話もありました。

特別講演1(鷹取副会長)

特別講演2(パネルディスカッション)

「法令改正から2年、802.11ahビジネスの現状と今後の展開」について、リックテレコムの土屋様司会のもと、3つのテーマでパネルディスカッションが行われました。 パネリストは以下の4名の方々です。
・ 東日本電信電話株式会社 増山 大史様
・ サイレックス・テクノロジー株式会社 綱嶋 和也様
・ エイチ・シー・ネットワークス株式会社 小川 大豪様
・ 株式会社フルノシステムズ 川地 耕二様

テーマ1「802.11ahビジネスの現状と進捗」

増山様は、提案数が3年で10倍、受注数が16倍に増加したと述べられました。また、町のインフラに利用され、広範囲で簡易な映像伝送が可能なプライベート無線として好評を得ているとのことです。

特別講演2(左から増山様、綱嶋様、小川様、川地様)

綱嶋様は、802.11ahビジネスは2018年にアメリカからスタートしており、4年で800件の引き合いがあったと報告されました。特に画像伝送の需要が多く、PoCを超えて実用段階に進展しているとのことです。
小川様は、以前は興味本位だったが、深刻な人手不足を受けて、生産や流通状況の「見える化」に向けてCBMの導入が進んでいると話されました。
川地様からは、実証実験数や出荷数が昨年より倍増しており、一次産業での活用が進んでいることを報告されました。特に、河川監視や密猟監視、映像による人流分析などでの利用が拡大しているとのことです。 また台湾Askey社と組んでキャンペーンも実施していると話されました。

テーマ2「802.11ahビジネス、今後の戦略と課題」

増山様から集合住宅の管理業務に使えないか考えているとの報告がありました。Matter等も視野に入れコンシューマ機(スマートロックなど)との連携も目指したいとのことです。
綱嶋様は技術的に深堀を進め、今後は電波サーベイ機能なども充実させていくと述べられました。また耐環境性の対応、既存のWi-Fiとの組み合わせ提案も進めるとのことです。
小川様からは以前インフラ会社の架空配線作業にて2kmを4ホップさせる予定が失敗した話がありました。そのため、より通信を安定させるために高利得アンテナの活用を考えているとのことです
川地様はデータ駆動型社会の実現に向けて、カメラだけでなくデータ収集のためのセンサ類の拡充もしていく必要があると話されました。

テーマ3「AHPCの役割と期待」

増山様から従来のWi-Fiや他無線との連携促進、またグローバルへの情報発信としての役割をAHPCには担って欲しいと話がありました。
綱嶋様は2.4/5GHzなど他無線業界との連携、また認知度向上のための啓蒙活動を期待していると述べられました。
小川様はより使いやすい制度化の推進、継続を期待しているとのことです。
川地様は802.11ahに関連する各レイヤーの会社(機器メーカ、工事、ネットワーク設計、AI等)の連携促進に期待すると話されました。
また、そこで完成したサービスを運用しながら新たなニーズの発掘を進め、製品開発に活かす、というサイクルを回すことが重要とのことです。


閉会挨拶

協議会を代表して、鷹取副会長が閉会の挨拶を行いました。Future MAPの講演では、850MHzの利用により、802.11ahが「拡がる」「繋がる」「使える」ようになると紹介されました。これは、今後のビジネスを加速させるために、AHPCとしての重要な役割でもあるという話がありました。

意見交換会

総会や特別講演の後、メガチップスの東郷様と林様の司会のもと、稲田教授の乾杯のご発声で懇親会がスタートしました。懇親会には総勢77名が参加し、普段はあまり話す機会がないメンバー同士が、今後の802.11ahの進展について意見交換をしました。市場の拡大や発展に向けて、意義深い会話が交わされました。

懇親会(左から司会の東郷様、林様、開会ご挨拶 稲田先生)