802.11ah推進協議会(AHPC)第3回総会の模様


 2020年12月4日、東京・神田の株式会社 ビーマップで「802.11ah推進協議会」(以下11ah協議会)の第3回総会が開かれました。今回はテレワークでの開催となりました。


  最初に11ah協議会の小林会長から開会の挨拶がありました。

   AHPC創設から第3回総会でまる二年になりました。この間の活動として、一つ目として高速な通信が可能な802.11ahとお伝えしましたが、実際に利用可能か実験を進めてきました。二つ目として既存の920MHz帯LPWAと共存のため規則の改正が必要ですが、改正に向けて大きな山場を越えました。三つ目として、法改正され802.11ahが利用可能となっても製品やサービスの準備がなければワイヤレスのビジネスを進めることができません。そのためそういった面も含めて推進を行っています。
 今回はテレワークでの開催のため、皆様と情報交換を行えず残念ですが、若干の遅れがありながらも着実に進んでいます、とし引き続き802.11ahのビジネスを推進するとしました。

  開催に当たり定数が報告され、委任状を含め過半数の出席が確認され開会が宣言されました。 総会会則により、総会の議長は会長が務めることとなっているため、小林会長が議長に選任されました。

  最初の議事として、北條運営委員より協議会活動報告がありました。

  昨年の第2回総会で報告した活動計画に基づき、装置特性の評価、7つのサービストライアルを行ってきました。周波数割り当ての取り組みについても社会情勢により若干遅れ気味でしたが、本総会前にようやく導入への目途がたちました。さらに11ah協議会の2020年度収支について報告されました。

  続いて鷹取運営委員より技術TG活動について、802.11ahについて三つの取り組みを報告されました。

  一つ目として、伝送距離含めて802.11ahの実力の確認を行ってきました。様々なユースケースを満足できるよう様々なモデル(屋内、屋外、オフィス、都市部、郊外など)を用意して評価を行っています。オフィス環境での測定では上下のフロアをまたいでも通信可能でした。屋外の都市部でのビデオフォンを利用した評価を行い、200m以上離れても通話が可能でした。屋外ルーラル環境での測定では1台のAPで数百mのエリアがカバーできました。さらに海上での評価も行い2.5kmの伝送距離が確認され改めて802.11ahのポテンシャルが確認されました。
 二つ目として、920MHz帯の利用状況の調査です。昨年の総会でもご報告していますが、新宿のような密集地でも非常にトラフィックが少ないことが分かりました。その他の測定エリアを含めて総じて利用率1%以下という結果が得られています。
 三つ目として制度化への取り組みです。最初に利用可能になる周波数帯は920MHz帯になります。総務省のパブリックコメントにも11ah協議会として802.11ahが利用可能になるようコメントしています。既存の920MHz帯利用者との調整も無事終了しました。もう一つの周波数帯としてMCA跡地がありますが、これから議論が活発になっていきます。既存の無線局が存在しないため802.11ahの性能を最大限発揮できる周波数と考えています。
 実証試験や利用状況調査、制度化の取り組みを着実に進め、802.11ahの利用促進を進めていくとしています。

  酒井運営委員よりマーケティングTGの活動について、1年間で非常に迫力のあるユースケースの検証を行うことができたと報告がありました。

  既存LPWAでは利用できないユースケースの拡大やWi-Fiを補完するようなユースケースの広がりがあると考えています。集合住宅やオフィスなど、それぞれのユースケース特有の課題に対して対応できると考えています。昨年のWirelessJapanでの評価をふまえ、モールや大型施設のような人が密集するようなユースケースにも対応できることが分かりました。
 郊外でのユースケースでは、インフラ投資が莫大にかかるという問題がありますが、802.11ahの様な長大な伝送距離や画像を送れる802.11ahはフィットすると考えています。地方部のユースケースでは、農業という切り口とし、防災や安心安全にも利用するというマルチユースケースを推進しています。
 802.11ahは、既存のLPWAでは届かない部分とWi-Fiのメリットを持っている無線であるということを1年間のユースケース検証で示すことができました。具体的な取り組みを皆さんと進めていき、様々な社会的要請にこたえていくとしました。

  運営会の体制について江副運営委員から報告がありました。運営委員の退任、新運営委員の就任、新副会長の就任が報告されました。

  総会の最後に、鷹取新副会長から今後の活動について報告がありました。制度化の推進です。ポイントは2021年度のQ1までに作業班報告の技術的合意を行うことです。そのため、制度化後の802.11ahのビジネスのため今が商品開発やサービス開発のスタート地点になりましたとし、来年度の商用化に向けて秒読み段階に入ったとし、今後の活動を推進していくとしました。

  議長の小林会長より、全ての議事の終了が宣言されました第3回総会の第一部は終了しました。

  休憩をはさみ特別講演としてNewracom社のVP of Marketing & SalesであるFrank様より「802.11ah - Halow」と題した講演が行われました。

  802.11ahのWi-Fi Allianceでのバックグラウンドや、自動車内でのネットワーク利用、スマートホームでの利用などが紹介されました。また、様々なプラットフォームが802.11ahをサポートしていると説明されました。

  特別講演の2人目として神奈川県水産技術センター・相模湾試験場・専門研究員の鎌滝様から「漁業の現場から見た802.11ahへの期待」と題して講演が行われました。

  神奈川県における漁業の課題や、最近の漁業を取り巻く環境の変化(法改正)、定置網漁業の内容や課題について説明を頂きました。 それらを踏まえ、漁業資源の保護や定置網漁業の維持のため802.11ahに対して今後のスマート水産業を促進するうえでのキーテクノロジーであるとして期待を示され、802.11ahを推進していく上での非常に有益な講演となりました。

  最後に鷹取副会長から閉会の挨拶が行われ、IoTの本命として802.11ahの推進を会員皆様と進めていくと締めくくり、第3回総会を終了しました。