802.11ah推進協議会(AHPC)第6回総会開催報告


運営委員 藤井 慎

2023年12月15日(金)、NTT東日本中央研修センターにて、802.11ah推進協議会(以下 AHPC と記載)第6回総会が開催されました。4年ぶりの集合形式(Web会議形式併設)の開催となり多数の来場者がありました。総会に先立ち、2023年10月にオープンしたばかりのプライベートワイヤレスラボ「νLab(ニューラボ)」見学会も開催されました。

■開催挨拶
802.11ah推進協議会会長 小林 より、1年会の802.11ah推進協議会(以降、AHPCと記載)の活動の振り返りと、今後の取組み方針の提示、活動費の会員各社の協力要請がありました。

はじめに、本日発売の書籍「地域循環型社会の実現に向かって(NTT東日本監修)」について、νLabの記事も掲載されていること、NTT東日本のご厚意で来場者全員にお渡しするとのこと、紹介がありました。
2022年9月に11ahが商用化した頃は、規格や特徴を知らない方の方が多い状況でしたが、1年経過し、使ってみたい、評価したい、あるいはすでに受注した、との話を聞くようになってきた、トライアルの記事も増え実用性が進んでてると思います。
ビジネスを加速するために、今日、見学いただいたνLabを10月にオープンしました。11ahを使いたい、商品やサービスを開発したい方に多く来場いただき体験してほしい、新商品やサービスの訴求の場にも使ってほしい。共創スペースでは、端末からクラウドまで一社では解決できない問題を解決する場に使ってほしい、学生や若い技術者の育成もしたい。
AHPCは920MHz帯を日本で使えるよう努力を重ねてきた。これからは、各社の戦略にそって商品やシステム、サービスをつくり、共創と競争のフェーズにはいります。
ものづくりで進んでいる台湾企業に、日本市場のニーズや欲しいものを伝え日本企業のビジネスにするためのアライアンスを深堀したい。台湾のイベントとも連携して新しいことができないか模索したい。との話がありました。
現状会費無料だが、多くの活動には費用がかかることから、資金確保を相談したい、との要請がありました。


■来賓挨拶及びご講演
総務省 移動通信課 課長 小川 様より、5Gの整備状況、ローカル5Gの制度改正、11ahのMCA帯特定実験試験局制度化、自動運転、Beyond5Gについてご講演いただきました。

5Gの人口カバー率について、目標に対し基地局も順調に増加し計画を上回るペースで整備が進められている一方、ユーザーの実感にギャップもあり、より高度な周波数の利用拡大が必要とのことです。ローカル5Gは制度改正でより柔軟な運用が可能となりました。
加賀市周辺のMCA帯で11ahを使う特定実験試験局に関する告示を12月7日に制定済みとのご紹介がありました。
自働運転やドローンの社会実装に向け、関連する周波数帯での環境整備をすすめておられるとのことです。2025年大阪関西万博にてBeyond5Gの研究開発成果を披露する計画をご紹介いただきました。


■総会議事:技術TG活動報告
鷹取技術TGリーダより、920MHz帯についての運用ノウハウ、MCA跡地に向けた取り組みについて報告がありました。

ノウハウとして、複数の802.11ahが共存する場合、チャネルをそろえる、フレネルゾーンに障害物が入らない場所を選ぶとよい他、デューティ制限があるものの、細切れに送信するため実際には連続通信できる説明がありました。MCA跡地はデューティ制限がなく、ダウンロードや双方向通信の使い勝手がよくなるため、サービス終了を待たずに使えるよう要望したい。最後に制度化加速のため、商用機開発予定の会員の技術TG参加協力要請がありました。


■総会議事:マーケティングTG活動報告
森田マーケティングTGリーダより、展示会への出展、台湾ベンダーとの交流会、νLabオープン、市場活動について報告がありました。

ワイヤレスジャパンへの出展状況は、前回の1.3倍のブース来場があり、アテンドが間に合わず配布資料も不足したとのこと。本日、来場者の方には見学いただいたとおり802.11ahの実力を体感できるνLabをオープンしました。市場活動については、高知県の農業、神奈川県の畜産分野他での802.11ah応用が紹介されました。来年は、台湾企業とのデバイスの拡充、市場拡大活動と会員企業のバックアップを進めたいとの抱負が示されました。


■総会議事:会計報告、他
北條運営委員より、会員数の推移、会計報告、運営委員任免について報告がありました。

会員数は制度化の後押しがあり、設立時の56団体から現在156団体に達した。
予算はワイヤレスジャパンの寄付を受け増加、未収金分200万円はすでに振込み済み。
体制については、吉田様、山田様が運営委員に選任、鷹取様は再任、アドバイザーの竹田様が延長、江副様、小中様は運営委員を退任されました。

■特別講演1
802.11ah無線チップメーカのNewracom VP Frank Lin 様より、802.11ahの到達実験、顧客用途でのフィールドテスト実績、迅速な製品化のサポート、エコシステムへの注力について講演がありました。

スマートビルディング向けに様々なテスト環境で、2.4GHz帯Wi-Fiと到達範囲の違いを比較実験し、距離と通信速度の観点で11ahの柔軟性が非常に優れているとの結果を得たとのことです。医療機器、遠隔モニタリングに分野に力をいれており、ある顧客は検証を終え商品化を進めているとのことです。パワーアンプを内蔵することで、各国の規制に対応しやすくしたシリコンを市場に展開済みとのことです。台湾、日本の多くのパートナーと連携し、エコシステムを構築するパートナーを増やしビジネスチャンスに生かすことを望んでいるとの話がありました。お客様が自信をもって製品開発し市場で大成功を収めることをお手伝いしたい、との言葉で締めくくられました。

■特別講演2
802.11ah無線チップメーカのMorse Micro CEO Michael D Nill様より、マーケティング概要、Wi-Fi HaLowの利点、到達距離の実証実験結果、様々なシーンでの活用事例について講演がありました。

シリコンは現在量産中であること、Newracomと相互運用性を確保してきたこと、ビジネス状況については、モジュールベンダーやODMメーカへの採用、インターネットへのカメラ接続やホームゲートウェイ対応をISPと進めているとのことです。Wi-Fi HaLowはカバー範囲が広く、工場や倉庫で移動ロボットがローミング不要、ドアロックやインフラ用途で大規模な接続が可能とのこと、アウトドアや農場での通話手段を提供可能にするなど新しいソリューションを生むことができるとのことです。CESでは、当社製シリコンを内蔵した多くの製品が発表され、新しいアプリケーションを目にすることができるでしょうとの話がありました。


■特別講演3
ソニーセミコンダクターソリューションズ 太田様より低消費電力マイコンボードとそのペリフェラル、応用事例について講演がありました。

この製品は極低消費電力ながら高性能、GPSを搭載しており、画像処理能力も高い。ペリフェラルには高感度かつダイナミックレンジの広いカメラやWi-Fi HaLowなどが用意されている。監視画像をホッピング形式で送ることにより、1kmからその先に届けることができ、電力会社では設備監視員の危険を伴う監視業務を減らすのに役立つ。不感エリアでのドローン運用や、衛星間通信へ活用ニーズもでているとの話がありました。


■閉会挨拶
鷹取副会長より閉会挨拶がありました。
AHPCとしては、皆様とともに市場拡大の活動を継続したいと考えています。11ahの展開ででてきた課題や改善点は、本日ご覧いただいたνLabで実験したり検証したりして、解決策を見つけることが可能です。また、新たな周波数についての期待もあります。次回の総会では、ビジネスの成功例をたくさん共有できることを楽しみにしています。
最後に、本日の参加者への感謝の意を表し締めくくりました。